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⑨野生に帰る時間

昨年9月下旬に友人と2人で宇都宮市からほど近い那須でキャンプをした。不動産業を営みながら自分で栽培している雪待ニンニクや夏野菜、新米だのを届けてくれる友人と、稲刈りが一段落したらキャンプに行こうと話し合っていた。キャンプ用具なるものは持ち合わせていないが、息子がそろえていた登山用具が一式あったので何とかなるだろうと思っていた。


“ひろしのソロキャンプ”よろしく、キャンプや焚き火が流行っているらしいが、もっと愛好者は増えそうだ。キャンプも昔のように、どこででも自由にできるという時代ではなくなった。今回は直火で焚き火ができるところ、設備は最低限でも良いが、なるだけ自由にキャンプができるキャンプ地を探した。手入れがされていないと言うと管理者に失礼になるが、幸いほぼ自然林に近い状態のところでやれた。


焚き火用の薪はすべて友達の家から積んできたものだ。近くの竹林から竹も自由に切って良いとのことであったので、孟宗竹の大きいのを一本いただいて、下の写真のような取り皿やお椀、お箸などを作って食器がわりに使った。竹は色々と活用できるので野外では重宝だ。もっぱら料理は友人が腕を振るってくれ、夜は鶏肉の料理と炊き込みご飯、朝はアヒージョなるものを作ってくれた。



夜は、虫の音とパチパチと燃える焚き火の音だけが聞こえるだけ。いつまでも昔話に花が咲いた。少々肌寒くなる季節であったので、テントの中の寝袋にもぐりこんで寝たが、ぐっすりと原始人の様に眠った。朝食後は木漏れ日の中を童心に返ってスケッチしたり、栗などを拾って過ごした。帰りは近くの温泉につかりながら、「来年は渓流の近くでキャンプしたいね」などと話が弾んだ。



キャンプといえば、中学生の頃、故郷の隠岐の島で友達3人で行った夏のキャンプが忘れられない。昔の田舎でのことなので、キャンプ用のテントなどはない。おふくろに家で使っていない蚊帳(かや)のお古を貰って、地元では“カンコ”と呼ばれていた艪をこぐ小舟に、米と醤油と釜だけ積み込んで出かけた。交代で何キロも舟を漕ぎ、島の裏側にあるサザエやアワビの良く採れそうな入江を選んでキャンプ地とした。



絶景の場所にテント代わりの蚊帳を張り、手頃な石を積んで竈を造り火を焚いた。タコを捕ったり魚を銛で刺したり、アワビやサザエを好きなだけ捕った。当時は漁業券などは不要であった。見渡す限り3人しかいない入江で過ごし、のどかな海は時々漁師の小船が沖を通り過ぎるだけである。ご飯のおかずはほぼ現地調達。焼き魚にサザエの壺焼き、メインはサザエとアワビの炊き込みご飯である。潮風に吹かれて食べるご飯は最高にうまい。夜はテント代わりの蚊帳の中で満天の星空を見ながら、打ち寄せる波の音を子守歌に気持ちよく眠った。


昨今はどこででも勝手にキャンプできるという時代ではなくなったが、キャンプをするならなるべくワイルドというか、野生的なスタイルでしたいと思う。いわゆるブッシュクラフトと呼ばれ、北欧などではポピュラーなキャンプスタイルです。市販のキャンプ用品などは極力持ち込まず、テントと寝袋とナイフ、必要な食品だけをリュックに詰めて自然を楽しむキャンプです。今回もつくづく、たまには「野生に帰る時間」が必要だと改めて思ったものである。美しい自然の中で暮らしたい願望が強いのであろう。そんなわけでいい歳をして、いまでも綺麗な南太平洋あたりの無人島にはあこがれるのである。





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